杏(アンズ)
バラ科サクラ属
英語名:apricot
仏語名:abricot
アプリコットの名前でも知られる杏(アンズ)は、加工食品を中心に全世界的に広く愛されている果物。ジャムや乾燥果はもちろん、ジュース、リキュール、ケーキなど、本当に幅広く使われている杏の魅力をご紹介しましょう。
アンズの由来と特徴
アンズは中国東部を原産地とする落葉小高木です。春に桜より少し早く、ほんのり紅色がかった白く美しい花を咲かせ、6月下旬から7月中旬頃に実が収穫されます。その栽培の歴史は非常に古く、4000年から5000年前に中国で栽培が始まり、1世紀頃にヨーロッパに伝わったといわれています。
東アジアの気候に適しているせいか、中国や日本では古くから庶民の生活に馴染み深い果物であり、生食はもちろん干しアンズなどとしても広く食されてきました。現在日本では長野県、山形県などが産地として名高く、世界的にはアメリカのカリフォルニア州が代表的な産地です。
果実は3~6cmの球形または楕円形で、橙黄色や赤黄色に熟します。乾燥や加熱によって甘み・酸味が増し、さらに深くきれいな橙色になることもあり、ケーキなどのデザート、お菓子には欠かせない食材となっています。
また、核の中にある種子「杏仁(あんにん・きょうにん)」は中国の代表的なデザートである杏仁豆腐の材料や、古くから伝わる漢方薬の薬味としても知られています。
杏の効能
果肉はビタミンAを多く含み、リンゴ酸やクエン酸などの有機酸も豊富で、疲労回復や食欲増進、便秘などに効能があるといわれています。また身体を温める作用もあり、干しアンズは古くから冷え性によいといわれています。
主な品種
平和
最も一般的な品種で、大正時代初期に長野県で偶発実生により発見された。果実は35~40gで、果肉は繊維が少なく緻密。酸味や香味に富むため、ジャム、シロップ漬け、干しアンズなどに広く用いられる。
新潟大実
新潟県の原産といわれ、古くから栽培されている。実は50gぐらいと、やや大ぶりで酸味が強い。「平和」同様、主に加工食品に用いられている。
山形3号
山形県の原産で、大きさは35~40g。日保ちは「平和」にやや劣るものの、肉質は緻密で酸味も豊富。加工食品の他、果実酒の材料としても適正が高い。