そもそも甲類の「甲」って何? ~甲の語源を探る~
甲は「十干」の中で最初に出てくる文字です。元々は亀の甲から発した「硬い外皮」のことで「よろい」や「かぶと」のことも意味するようになりました。十干(じっかん)とは古代中国の暦で、起源は殷の時代(紀元前11世紀から16世紀頃)までさかのぼります。
この時代、10日を一旬といい、この一旬=10日ごとに繰り返される日にそれぞれ名前を付けたのが始まりといわれています。今でも、ひと月を10日ごとに区切って上旬・中旬・下旬というのは、この名残ですね。
さて、この十干、ひとつひとつの文字ごとに万物の栄枯盛衰を表す意味を持ち、これが繰り返されるということで暦が成り立っています。

音読み | 訓読み | 意味 | |
---|---|---|---|
甲 | こう | きのえ | よろい。草木の種子がまだ「かたい」皮を被っている状態。 |
乙 | おつ | きのと | 軋る(きしる)。幼芽がまだ伸びきらず曲がっている状態。 |
丙 | へい | ひのえ | 炳らか(あきらか)。芽が伸びて、その形が著明になった状態。 |
丁 | てい | ひのと | 壮(さかん)と同義語。形態が充実した状態。 |
戊 | ぼ | つちのえ | 茂るの意。繁茂して盛大になった状態。 |
己 | き | つちのと | 紀の意。繁茂して盛大になり、さらに条理が整った状態。 |
庚 | こう | かのえ | 更まる(あらたまる)。成熟結実して行き詰まった結果、 自ら新しいものにあらたまって行こうとする状態。 |
辛 | しん | かのと | 新と同義。枯死した後にまた新しくなろうとする状態。 |
壬 | こう | みずのえ | 妊む(はらむ)。また種子の内部に更に新しい生命が始まること。 |
癸 | き | みずのと | 揆る(はかる)。種子の内に妊まれた生命の大きさがはかれる程になった状態。 (→また甲に戻る) |
日本ではいつからか物事の順番や順位を表す言葉としても用いられ、甲が一番、乙が二番というふうに使われてきました。学校の成績表で昔は優秀な順から「甲→乙→丙→丁」という評価が使われていたのは有名ですね。
また、契約書などの中では二者を差別化して特定する場合「甲・乙」という呼び方を今でも使用していますし、二つのものの評価が拮抗して順位をつけにくい状態をいう「甲乙つけがたい」という言葉も一般的に使われています。
焼酎の業界では、1949(昭和24)年に制定された酒税法で、新式焼酎と呼んでいた連続式蒸留による36°未満の焼酎を「甲類焼酎」と呼称するようになりました。
その他 豆知識
十二支と十干
「うま」「ひつじ」などの十二支(えと)と十干を組み合わせた「六十干支」というものがあり、日本でも古くからそれを年や日に割り振り暦を表してし ます。12と10の最小公倍数が60で、60年で暦が完全に一回りするわけです。人の60才 を祝う還暦もここから来ています。「丙午(ひのえうま)」などは、この六十干支の呼び方です
歴史や地名に残っている六十干支
日本の歴史上の事件や地名・施設名などに、この呼び方が残っているものがあります。
・壬申の乱 672年、壬申(みずのえさる)の年に起きた。
・戊辰戦争 1868年、戊辰(つちのえたつ)の年に起きた。
・甲子園球場 1924年、甲子(きのえね)の年にできた。
・庚申塚 庚申様(青面金剛)を祀った塚。江戸時代に盛行した庚申(かのえ さる)の日の夜に青面金剛や帝釈天・猿田彦を祀った習俗を起源とする。
